SEAGULLIV COLUMN




“安全な飲み物”だったワイン 
環境リスクから始まる長寿医学

ワインは嗜好品であり、文化であり、食事を豊かにしてくれる存在だ。

しかし、その起源をたどると、意外な事実が見えてくる。実はワインは、かつて「安全な飲み物」として人々の暮らしを支えていた側面があったのだ。

そしてその話は、決して過去の歴史では終わらない。

PM2.5、化学物質、マイクロプラスチック― 現代の私たちを取り巻く環境リスクを考えたとき、「水の安全性」というテーマは再び大きな意味を持ち始めている。

今回は医師・大友博之氏に、ワインの歴史から見えてくる現代の環境問題について伺った。

大友博之(以下:大友)渋谷セントラルクリニック代表、日本抗加齢医学会専門医、欧州抗加齢医学会専門医 →プロフィール詳細
インタビュアー(以下:聞き手)


投稿日:2026.6.30   |  読了:3分  

ワインの普及に一役買った「危険な水」

聞き手:医師として、ワインの歴史的な役割をどう見ていますか?

大友:実はワインの起源を辿ると、非常に興味深いことがわかります。

古代ヨーロッパでは、川や井戸の生水をそのまま飲むのは危険でした。
土壌汚染や病原菌、有害物質・・・水は常にリスクと隣り合わせだったんです。
その中で、発酵によってアルコールを含むワインは、結果的に殺菌・抗菌作用を持つ“比較的安全な飲み物”として普及しました。

ワインは美食文化の産物である以前に、「リスクから身を守るための知恵」だったんです。

これを知ったとき、私はハッとしました。

「水のリスク」という問題は、現代も変わっていないのかもしれない。
いや、むしろ現代の方が、問題ははるかに複雑になっている・・・そう感じたんです。

大気汚染から懸念される水のリスク

聞き手: 現代の水の汚染とは?

大友:例えばPM2.5のような微粒子や、さまざまな化学物質、マイクロプラスチックなどが、目に見えない形で空気中に存在しています。

そして重要なのは、それらが空気中にとどまるだけではないという点です。

大気中の粒子は、雨とともに地表に降り、土壌や河川、地下水へと入り込んでいく。
つまり、空気の汚染は水の汚染へとつながっていく構造があります。

さらに、これらの汚染は、色や匂い、濁り、味などとして認識できないことが多い。
また、すぐに症状として現れるものではなく、長期的に体内へ蓄積していく可能性がある。


そうした意味でも、現代の水のリスクは「存在しているのに認識しづらい」という特徴があると考えています。

※PM2.5(微小粒子状物質)とは
直径2.5マイクロメートル(μm)以下の超微小な大気汚染物質。
髪の毛の太さの約30分の1以下で肉眼では見えず、肺の奥深くまで入りやすいため、ぜんそくや気管支炎、循環器疾患などの健康被害リスクが高いとされている。主な発生源は、工場や自動車の排ガス、物の燃焼などで、黄砂など自然由来のケースもある。

PM2.5は“脳の問題”として捉えられ始めている

聞き手:現在の汚染リスクのなかで、先生が特に懸念されていることはありますか?

大友:特にPM2.5は今、医学界で最も注目されているテーマのひとつです。
単なる呼吸器の問題ではない、ということが次々と明らかになってきています。

例えば、パーキンソン病やアルツハイマー病、レビー小体型認知症といった、いわゆる神経変性疾患との関連が指摘されている。

つまりPM2.5は、「空気汚染の問題」ではなく、「脳の問題」としても捉えられ始めているということです。

次回は、この点については、具体的なデータや研究結果、そして体内で何が起きているのかというメカニズムを、もう少し詳しく見ていきます。

→第5回『PM2.5は脳を変えるのか―6300万人データが示す“空気と認知症”の関係』へ続く

Q&A

水が安全ではなかったため、発酵による殺菌作用を持つワインが比較的安全な飲料として普及した。

Profile

大友博之|渋谷セントラルクリニック代表

シーガルフォー使用歴は約20年。エピジェネティクス・長寿医学を専門とし、「何を食べ、何を飲むかが遺伝子の発現を変える」という視点から、予防医療や健康寿命に関する情報発信を行っている。

> 健康寿命を科学的に延ばす未来医療メディア『IshiPedia』
> 東京の長寿医学・個別化医療『渋谷セントラルクリニック』

渋谷セントラルクリニック代表として臨床に立つ一方、自身も深いワイン愛好家として知られ、医療・食・芸術・ライフスタイルを横断した独自の提案を続けている。

医食同源をテーマにした西洋薬膳レストラン「FAM」の監修など、食と健康を結びつける取り組みも行なっている。芸術や文化への造詣も深く、「豊かに生きること」と「健康であること」の接点を人生を通して探求し続ける、唯一無二のドクター。

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